新たな知慧・技術の実践

エキノコックスをなんとかしたい!


 寒い地域を中心に分布しているサナダ虫の一種、エキノコックス(多包条虫)は動物の寄生虫です。キツネやイヌ(終宿主)がネズミ(中間宿主)を食べる行為をこの寄生虫は巧みに利用して増殖しています。終宿主の糞便に混じったエキノコックスの卵が食べ物に付着したり、なんらかのルートでヒトの口から入って体内に潜り込み、定着すると5~15年かけて肝臓でガン細胞のような増殖を繰り返します。ヒトで症状が現れると、とても危険な寄生虫です。ヒトからヒトへも、ネズミからヒトへも伝播しませんが、感染源となる動物、すなわち、キツネやイヌ(終宿主)から排出される卵の拡散を防止し、さらに、感染源を無くす必要があります。
 現在、キツネの半数がエキノコックスの卵をばらまいているような汚染環境では、住民は安心して生活できません。安心して農業や観光業ができなくなります。安心して地域の農産物を食べられません。豊かな自然の恵み、おいしい水を腹いっぱい安心して飲みたいと思いませんか? なっとくにいく食品を食べたいと思いませんか? そのためには感染源対策を実施しなければなりません。エキノコックス問題は安全保障問題です。私たちは、市民生活と深くかかわりあった未来の問題解決型研究を進めてきました。未来問題解決に重要な役割を果たすのではないかと期待されている地域の大学、役所、経済界の方々にも、活動の意味をもっと理解していただこうと考えます。
 北海道の高レベルの汚染環境をなんとかすれば本州への新たな流行地の形成は、いまなら防げると考えています。北海道内の患者の情報などの詳細は、通常、表面には出てきません。住民が覚悟を決めようにも判断材料がありません。このあたりで大学や役所の病気から市民の病気へ転換させたいと考えております。この問題は、専門家だけの問題ではありません。すべての住民に参加自由の問題です。知や技術の通俗化を目指しているのでもありません。批判を受けながら新たな知慧・技術を生み出し、問題解決へ実践したいのです。「環境動物フォーラム」への積極的な参加をお待ちしています。


2003年6月25日
環境動物フォーラム代表 神谷正男